奏章プロローグ
- 時代
- 第七異聞帯の切除直後と、その数週間後
- 舞台
- 南極圏の手前と、白紙化地球を巡るストーム・ボーダーの艦内
- 脅威
- 南極を囲む人理の壁。生んでいるのはカルデア自身の歪み
- 聖杯
- 聖杯は関わらない。人理定礎盤が艦の歪みを測る
発生タイムライン
- 2001年頃
- 2015年
- 人理焼却の解決後
- カルデアスの2117年
- 南極圏の手前
- 南極圏の手前
- 南極圏の手前
- 南極圏の手前
- 南極圏に入った時
- 南極を一周した後
- 南極を一周した後
- 序から数週間後
- 招集の日
- 招集の日
- 招集の日
この章について
第七異聞帯を切除したストーム・ボーダーは、南極のカルデア基地へ向かっていた。その航行中に、シオンが『被検体:E』の解析結果を報告する。トラオムのエリア51で見つかった遺体と手術室から、地球白紙化の手口が割り出された。白紙になったカルデアスの地表と、地球の表層が置換魔術の要領で入れ替わったという見立てである。地球そのものは、カルデアスの側で無傷のまま残っている。
カルデアスを作ったマリスビリー・アニムスフィアの目的は、地球をこの白紙の姿にすることだった。シオンはそこまでを結論とし、入れ替えて何になるのかは誰にも答えられなかった。カルデアス地球の白紙化は人理焼却の解決後に起きている。前所長の当初の予定は2016年の終わりだった、とゴルドルフは推す。
南極圏に入ったところで、艦は見えない壁に弾き返された。壁を生んでいたのはカルデア自身である。七つのクラスの外のエクストラクラスを使いすぎたため、汎人類史がカルデアを異物と見なしていた。告げたのは、甲板に現れたロマニ・アーキマンの姿の人物である。
カルデアは南極を離れ、歪みを正す試練を探す作戦をオーディール・コールと名づけた。数週間後、新装置の人理定礎盤がカルデアの歪みを最低のEと測る。これをAまで戻せば、南極の壁を越えられる。試練は探すものではなく、人理定礎盤の信号で呼び込むものと決まった。
章の流れ
エリア51の手術室
シオンの解析では、『被検体:E』がいた施設は汎人類史のエリア51の研究施設と99パーセント一致した。トラオムの大規模特異点のなかで、この手術室だけが場違いに近代的だった。カドックは、手術室を中心に大規模特異点が生まれたと見る。ダ・ヴィンチはさらに踏み込み、手術室はカルデアスの側にあるネバダの施設だったと推した。通路が宇宙空間のように見えたのは、惑星のあいだを移動していたからだという(この場面を読む)。
ここからダ・ヴィンチは置換魔術の話に移る。構成も情報量もまったく同じ二つのものは、どれほど離れていても入れ替えられる。第三者から見て何も違わないので、世界に異常が起きない。カルデアスは地球の魂を複写して作られた同一存在で、大きさの差は問題にならない。惑星を傷つけずに地表の文明だけを一瞬で消す方法は、それまで説明がつかなかった。すでに白紙だった地表と入れ替えたのなら、地球に傷はつかない。
この推論から、地球はカルデアスの側で無傷のまま残っていると分かる。カルデアスと地球の関係を元に戻せば、人類の未来は正しい形で進む。カドックは、白紙化で2017年に止まった人類史がもとの運営に戻ると受け止めた。白紙化地球を取り戻す道筋に、仕組みの上での説明がついた。
2117年の遺体
カドックは一つの矛盾を挙げた。カルデアスは100年先の地球をシミュレートしていたので、施設も2117年のものになるはずである。データ上の『被検体:E』の死亡時間は数日前で、あの空間がカルデアスなら2117年に死んだことになる。それなのに施設の技術は2017年と同じ水準だった。マスターは、機材を更新できなかったのではと答える。シオンはそれを採り、汎人類史のエリア51の秘匿施設も2001年頃に予算を断たれて閉鎖されていたと補った。
遺体は人類とまったく同じ生体構成をしていた。それでもトリスメギストスⅡは、遺体を地球人類と判定できなかった。結論を棚上げして状況だけを解析すると、答えは三つ出た。『被検体:E』はカルデアス地球の人間で、カルデアス人類はすでに滅んでいる。2017年から2117年までに発展した技術は、すべて機能を失っている。白紙化地球に残る建造物で動くとしたら、100年前の骨董品になる。
カドックはこの結果を復讐として読んだ。カルデアス地球は、地球と表層を入れ替えるために白紙にされた。それを知る最後の一人が、汎人類史への報復としてトラオムのサーヴァントを喚んだという。あれほどの数の召喚は、死に絶えたカルデアス人類すべての意思がなければ成り立たない。異様な数の令呪も、マスターの資質を持つ人々のものだとカドックは見る。彼は遺体の主を、マスターと同じく人類の未来を一人で背負わされた一般人と呼んだ(この場面を読む)。
マスターはこの読みに引っかかり、モリアーティの映像を思い出す。『被検体:E』のデータに仕込まれていたもので、ソレは地球の生命体ではないと断じていた。施設で100年にわたって隠され、実験され続けた生き物の残骸だという。その断末魔が同胞の異星の神を呼んだ、とモリアーティは見ていた。モリアーティの言う100年は、機材の更新が止まっていた年数と一致する。カドックの言う最後の人類と、映像の言う異星の生き物は一つにまとまらない。ゴルドルフが話を時系列の確認へ切り替え、この食い違いは解かれないまま残った。
白紙化の時期
ゴルドルフは、2015年の時点でカルデアスがすでに白紙だったのかを問いただした。ムニエルはこれを否定する。特異点Fで文明の光が途切れた箇所はあったが、地表は地球と同じだった。2016年までしか観測できないと告げていたのはシバのほうである。カルデアス地球の白紙化は人理焼却を解決した後で、2017年のカルデアはカルデアスに騙されていたことになる(この場面を読む)。
ゴルドルフはここから逆算した。マリスビリーの計画では、カルデアスは2016年の終わりに白紙化を起こすはずだった。ゲーティアの人理焼却は計画の外の出来事で、入れ替えを遅らせたと彼は見る。ダ・ヴィンチは、管制室の爆破も前所長の計画には無かったと続けた。オルガマリーがレフ・ライノールの手でカルデアスに落とされた時に、何かが狂ったという。
シオンは、カルデアスが作られた目的の八割はこれで明らかになったと述べた。目的は地球の、言い直せば人類史の入れ替えである。製作者のマリスビリーは、地球をこの姿にしようとしていた。次の問いは、そうして何になるのかである。ゲーティアやキリシュタリア、デイビットには、共感はできなくとも納得のいく理由があった。地球白紙化だけは、最終目的が見えない。
マリスビリーの人柄からも答えは出なかった。カドックは、彼が人類の繁栄を喜ぶ純粋な魔術師だったと証言する。ダ・ヴィンチは、そうでなければ冬木の聖杯戦争でソロモン王が召喚に応じて協力するはずがないと補った。そのうえで、マリスビリーの目的はまっとうに考え抜いた末の極論だろうと推す。カルデアスの状態と地球の無事までが分かり、残りは南極で明らかになるとダ・ヴィンチは締めた。
人理の壁
南極圏に入ったところで、ストーム・ボーダーは見えない壁に弾き返された。シバの警告も、敵性反応も重力場も無い。南極の側にも動きは無かった。マシュはこの守りが、ギャラハッドの宝具『いまは遙か理想の城』と同じ力だと見抜く。南極は人理保障に守られていた。ネモが南極を一周しても壁の切れ目は無く、次元穿孔の突撃も虚数潜航の侵入も取り消された(この場面を読む)。
答えは艦の外から来た。姿の見えない声が、七つの異聞帯を切除したことでカルデアスは人理保障天球になったと告げる。壁はカルデアスを守るものではなく、異物を通さない検問所だという。甲板にはロマニ・アーキマンの姿の人物が立っていた。その人物は、カルデアが汎人類史に無いものを扱いすぎたと指摘する。ルーラーやアルターエゴ、アヴェンジャーのような七つのクラスの外のサーヴァントである。濫用の結果、汎人類史はカルデアを異物と見なした。
人物は続けて、マスターの中の歯車が合っていないと言った。本来ありえない属性がなぜ存在し、それがどう人類史に寄り添うべきか。それを理解して認めれば、異物は異物でなくなる。歪みを清算するための空間は必ずあり、四つ、言い直して三つの清算が成れば天球の真実が明らかになるという。人物は別離が必ず訪れるとも告げ、その時を受け入れる心構えを持てと言い残した。
潔白の証明
トリスメギストスⅡの回答も、人物の告発を裏づけた。南極を囲む障壁は自浄作用に近く、生み出している原因はカルデアにある。人理から見れば、今のカルデアは犯罪者に近い。マシュは、壁が攻撃ではなく警鐘だったと受け止める。エクストラクラスを濫用すれば人理から外れるのは当然だ、とマシュは認めた(この場面を読む)。
マシュはその先まで口にした。カルデアスが悪しき目的で作られたのなら、デミ・サーヴァント実験も罪を問われるべきである。そのうえで自分の正否は自分の行いで示し、与えられた守護の力は悪くないはずだと言う。ゴルドルフは黙って聞き、心の中でマシュをほめた。同時に、第三者がこの事件を知ればカルデアが非難されると見越している。この者たちが報われるために自分に何ができるか、ゴルドルフは考え始めた。
ダ・ヴィンチは、マリスビリーが創立したカルデアは悪しきものだったと認めた。そのカルデアは、2015年のレイシフト実験の事故で精神的にも物理的にも閉館している。残ったのは前所長の思惑を知らない十数名の一般所員と、人理焼却を防ぐ責務を負ったロマニ・アーキマンだった。その時点でカルデアは、一個人の望む未来ではなく人々が広く思い描く未来を保障する組織になったという。
南極攻略は、潔白の証明の後に回された。ダ・ヴィンチは、歪みの影響を受けるタイミングや特異点に類するネジレがどこかにあると読む。それを見つけて潔白を証明するのが先決である。ネモは補給も兼ねて艦首を返し、ゴルドルフとシオンも同意した。シオンは兵器の濫用で犯罪者扱いされるのは耳が痛いと言い、三分の一は自分のせいかもしれないと認めた。ダ・ヴィンチは人物の言葉を借り、この作戦をオーディール・コールと名づけた。
問題用紙のない航海
それから数週間、ストーム・ボーダーは特異点を探して飛び回った。何も見つからなかった。ダ・ヴィンチは予定外の招集をかけ、歪みを正す手段の糸口を公開すると告げる。ゴルドルフは、七つの異聞帯を越えた今なら特異点など恐れるに足りないと構えた。カドックは、異聞帯は一つの歴史なので敵意が薄く、特異点は規模が小さくても汎人類史の脅威になると返す(この場面を読む)。
マシュの確認でも、ペーパームーンに異常は出ていない。ダ・ヴィンチは、解くべき問題用紙が存在しない状況だと言い表した。ネモは、海図も羅針盤も無い航海だとこぼす。ゴルドルフは成層圏まで上がる案を出したが、ダ・ヴィンチは宇宙船ではない艦に無理はさせたくないと最終手段に回した。
ダ・ヴィンチは発想そのものを改めた。問題を外に探したのが誤りで、今回の敵はカルデアの内側にある。南極を囲む正常な人理保障をカルデアが弾いているなら、まず今の自分の状態を知らねばならない。マスターは、ドレスコードを合わせるか体質改善に励むことだと答えている。
人理定礎盤
ダ・ヴィンチの依頼で、ネモ・プロフェッサーとシオンが新装置の人理定礎盤を作った。人類史全体ではなく、ストーム・ボーダー自体の人理定礎を測る装置である。示された値は最低ランクのEだった。これをAまで戻せば南極の人理の壁を越えられる、とトリスメギストスⅡは回答している(この場面を読む)。
戻し方について、シオンはしばらくこのままでよいと答えた。ロマニの姿の人物が口にしたコールは、何かに呼ばれることではなく、カルデアが呼び込むことを指す。人理定礎盤は、規則に違反した者がここにいると内外へ警告する装置でもある。これまで何度も越えてきた定礎復元の試練を、艦へ呼び込む信号として作られていた。ダ・ヴィンチは、これでオーディール・コールを鳴らしたと宣言した。
人理の咎とは何かという問いにも、トリスメギストスⅡは答えている。「咎とは認知の欠如。漫然と扱うのではなく、それぞれの存在する意味を知ること」(トリスメギストスⅡの回答。この場面を読む)。回答には表明・補完・訣別、あるいは依託・宣誓の語が続く。その問題に答えるたびに、歪みは正されるという。読み上げたダ・ヴィンチ自身、今は何のことか分からないと認めた。
ネモは、試練は向こうからやって来るので今は備えればよいとマスターに言った。備えの柱はクラススコアである。カルデアの人理定礎は落ちていても、七つの異聞帯の切除で人類史の定礎は大きく上がった。人類史を情報資源として英霊を喚ぶ召喚術は、より強い土台を得ている。クラススコアの強化は英霊1騎ごとではなく、そのクラスの英霊すべてに及ぶ。その最終到達点は対『異星の神』戦の切り札になる、とトリスメギストスⅡは予測した。
得たもの/失ったもの
ダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチカドック
ネモ
マシュ
ネモ
ダ・ヴィンチ
モリアーティ壁に阻まれたことで、旅の終着は先へ延びた。ダ・ヴィンチは旅のゴールが少しだけ先になったとマスターに断り、マスターは改めて協力を約束した(この場面を読む)。南極攻略の前に、艦は世界中を巡ることになる。ダ・ヴィンチはこれを、カルデアスと対面する前の身辺整理と呼んだ。
答えの出ない問いも残った。マリスビリーが地球を白紙にして何を得ようとしたのかは、シオンにもトリスメギストスⅡにも分からない。『被検体:E』が最後のカルデアス人類なのか、異星の生き物なのかも決着していない。カルデアの人理定礎がEまで落ちた理由は、外の敵ではなくカルデア自身の戦い方にあった。
関連
用語集の該当ページ。
- カルデアス / 白紙化地球 / テクスチャ / 汎人類史 / 異聞帯
- 人理 / 人理定礎 / 特異点 / 異星の神
- エクストラクラス / ルーラー / アルターエゴ / アヴェンジャー / サーヴァントのクラス / 英霊召喚
- ストーム・ボーダー / シャドウ・ボーダー / トリスメギストス / シバ / ペーパームーン / 虚数空間
- カルデア / デミ・サーヴァント / 人理焼却 / ゲーティア / アトラス院
中心人物。
- シオン・エルトナム・アトラシア / レオナルド・ダ・ヴィンチ / カドック・ゼムルプス / マシュ・キリエライト / ネモ
- ロマニ・アーキマン / マリスビリー・アニムスフィア / オルガマリー・アニムスフィア / ジェームズ・モリアーティ
前後の章。
- 前章: Lostbelt No.7 黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン
- 次章: 奏章Ⅰ 虚数羅針内界 ペーパームーン
- 奏章の一覧: オーディール・コール
出典: ゲーム内シナリオ全文コンコーダンス(tools/data/concordance/lines.jsonl、war 400 の本編スクリプト 0400000110「オーディール・コール 序」と 0400019910「オーディール・コール 0」)。0400019910 と同じ本文は war 401 にもスクリプト 0400010110 として入っている。