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Lostbelt No.1 永久凍土帝国 アナスタシア

時代
西暦2018年 / 雷帝が存命する21世紀のロシア
分岐点
A.D.1570頃 / 大寒波で雷帝が魔獣と結合しヤガになる
舞台
嵐の壁に囲まれた零下100度の凍土。首都ヤガ・モスクワと辺境の村々
脅威
夢を見ながら統治する雷帝と、皇女を帝位に就けたいクリプター
聖杯
聖杯は無く、空想樹オロチが要。崩れた跡で疑似聖杯を回収する
勢力
雷帝の宮廷
首都ヤガ・モスクワ。雷帝の夢から殺戮猟兵が生まれ、神父が宮廷を回す
クリプターと使徒
カドックと皇女は雷帝に仕えるふりで帝位を狙う。コヤンスカヤは相談役
叛逆軍と無頼の村
辺境の避難民を率いるアタランテと、逃亡兵や元貴族を束ねるベオウルフ

発生タイムライン​

  1. 浮上の約3か月前
    空想樹が芽吹き、地表の異聞帯への書き換えが始まる
    変化三か月で各地の書き換えが終わる
  2. 浮上の約3か月前
    上書きされたロシアの断末魔が、汎人類史の英霊を呼ぶ
    アタランテ〔オルタ〕ベオウルフビリー
    変化アタランテは叛逆軍を、ベオウルフは無頼の村を率いる
  3. 浮上の数時間前
    予言を受けたキリシュタリアが、クリプターを遠隔で招集する
    キリシュタリアカドック
    変化浮上先はロシアと読まれ、カドックが迎え撃つ
  4. 2018年4月初頭
    一週間の虚数潜航の末、殺戮猟兵を縁にロシアへ浮上する
    ホームズダ・ヴィンチ
    変化装甲が剥がれて再潜航できず、外は零下100度
  5. 到着当日
    狩人パツシィに救われ、雷帝が存命する西暦2018年と知る
    パツシィマシュ
    変化住民は魔獣と人間を合成したヤガだと分かる
  6. 到着の翌日
    凧で落雷を集め、アヴィケブロンを召喚する
    アヴィケブロンパツシィ
    変化密告で街を追われたパツシィが案内役になる
  7. ゴーレムで不殺を通し、アタランテの叛逆軍に迎えられる
    アタランテ〔オルタ〕アヴィケブロン
    変化一行は遊軍として村々へ檄文を配る
  8. ボーダー帰還の夜
    ここは分岐の先で続いてきた現代だと、ホームズが見立てる
    ホームズダ・ヴィンチ
    変化盾を構えられないマシュは、ナビゲーターに戻る
  9. 出立2日目
    無頼の村を率いるベオウルフと、叛逆軍が同盟を結ぶ
    ベオウルフビリー
    変化連絡役のビリーが叛逆軍に移る
  10. スモレンスクでの食料の徴発が、殺戮猟兵の乱入で虐殺に変わる
    アタランテ〔オルタ〕パツシィ
    変化母が市民に殺されたと知り、パツシィが去る
  11. 出立2日目の夜
    異聞の帯本編を読む
    トゥーラでアマデウスを名乗る敵と戦い、カドックが現れる
    カドックアナスタシア
    変化敵の正体はサリエリ。一行は皇女に敗れて逃げる
  12. トゥーラを逃れた夜
    ホームズが異聞帯を、汎人類史に敗れた歴史と定義する
    ホームズサリエリ
    変化サリエリが加わり、空想樹が異聞帯の要と分かる
  13. 新しい砦が宝具を入口に襲われ、叛逆軍が壊滅する
    言峰神父ミノタウロス
    変化砦の場所を漏らしたのはパツシィと分かる
  14. 処刑の5日前
    空の牢獄に、首都での処刑を告げるカドックの書き置きが残る
    ベオウルフパツシィ
    変化捕らわれたアタランテは、カドックの誘いに耳を貸す
  15. 処刑当日
    迷宮の発動に飛び込み、処刑台のアタランテを救い出す
    宮本武蔵アタランテ〔オルタ〕
    変化ミノタウロスが倒れ、アヴィケブロンが迷宮を巨人に変える
  16. 処刑当日
    殺戮猟兵が消え、山のような雷帝が夢から目覚める
    イヴァン雷帝アナスタシア
    変化カドックと皇女が雷帝打倒を明かし、一行と共闘する
  17. 処刑当日
    マシュが新しい宝具で雷撃を防ぎ、武蔵が雷帝の鼻を断つ
    マシュ宮本武蔵
    変化巨人が王冠を引き剥がす。武蔵は漂流して消える
  18. 処刑当日
    雷帝がマスターに滅ぼす覚悟を問い、答えを得ずに消える
    イヴァン雷帝マシュ
    変化汎人類史を守ればヤガは消えると、一行が認める
  19. 処刑当日
    アタランテが寝返り、パツシィがマスターをかばって死ぬ
    アタランテ〔オルタ〕パツシィビリー
    変化ビリーとの早撃ちで、アタランテが消える
  20. 処刑当日
    皇女がカドックをかばって消え、空想樹オロチが崩れる
    アナスタシアカドック
    変化嵐の壁が消え、疑似聖杯を回収する

この章について​

西暦2018年のロシアは、零下100度の凍土になっていた。住民は人間ではなく、魔獣と人間を合成した新しい種族ヤガである。始まりはおよそ450年前の大寒波で、隕石の落下による氷河期と伝わる。他の国は寒さに耐えられずに滅び、ロシアも人口の九割近くを失った。時の皇帝イヴァン雷帝は魔術師とともに魔獣との合成を進め、自らも魔獣と結合して最古のヤガになった。

雷帝はそれから四百五十年にわたって国を治め、今は首都ヤガ・モスクワで眠り続けている。その夢から生まれる親衛隊の殺戮猟兵が、辺境の村を焼いて回った。ヤガの掟は強い者だけが食べてよいという強食で、弱った者は街からも家族からも切り捨てられる。

この凍土は、別の道を進んだ歴史が地表を上書きした異聞帯である。ホームズは、汎人類史と違う歴史でありながら特異点のように狂ってはいない領域と定義した。宙から降りた空想樹がその楔で、異星の神は蘇生させたクリプターに領土と英霊を与えた。ロシアの担当はカドック・ゼムルプスで、彼のサーヴァントはロマノフ王朝の皇女アナスタシアである。

雷帝は空想樹を受け入れず、ロシアの樹だけは三か月たっても根付いていなかった。カドックとアナスタシアは雷帝に仕えるふりを続け、カルデアの到来を雷帝打倒の機会として使った。山のような雷帝を倒したのは、カルデアと叛逆軍とクリプターの寄せ集めである。

消える前に、雷帝はマスターに一つの問いを残した。汎人類史を取り戻せば、このロシアに生きるヤガはすべて消える。ロシアを発つとき、マシュはこれを世界を滅ぼすための旅と呼んだ。ホームズも同じとき、空想樹の切除を異聞帯での作戦の目的に定めている。

章の流れ​

凍土への浮上​

南極のカルデアを追われた一行は、シャドウ・ボーダーで一週間の虚数潜航を続けていた。地球は白紙化していて、浮上の縁になるのはカルデアを襲った殺戮猟兵しかない。ボーダーは境界壁にぶつかって損傷し、2018年4月初頭のロシアへ浮かび上がった。装甲が剥がれて再潜航はできず、外は零下100度の吹雪で、果ての見えない嵐がロシア全体を囲んでいた。

調査に出たマスターとマシュは魔獣の群れに囲まれ、狩人のヤガ、パツシィに助けられる。ホームズに問われたパツシィは、今は西暦2018年で、雷帝が五百年近く生きていると答えた(この場面を読む)。汎人類史では十六世紀の人物である皇帝が、生身のまま国を治めていると分かる。殺戮猟兵はその親衛隊で、一人ひとりは雷帝の使い魔にすぎない。

翌日、パツシィの街ヤガ・スモレンスクでは、カルデアを襲ったコヤンスカヤが食料を法外な値で売っていた。彼女に唆されたヤガは隣人から奪い合い、食料を手にしたのは集まった半数だけだった。コヤンスカヤはカドックの味方ではないと言い残し、一行を見逃す。直後に市民の密告で、パツシィは叛逆者として追われた。

一行はパツシィを連れて街を脱け出し、洞窟で凧を揚げて落雷を集めた。霊脈の上の召喚に応えたのは、マスターと縁を結んだことのないアヴィケブロンである。ホームズは、マスターとの縁より土地そのものが求める悲鳴の方が強いと見た(この場面を読む)。カルデアの霊基グラフにある英霊は、この土地ではそのまま成り立たないと取れる。街に戻れなくなったパツシィが、ここから一行の案内役になる。

叛逆軍​

パツシィの伝手を頼りに、一行は雷帝に背く叛逆軍を探した。叛逆軍と通じる村ではヤガに襲われ、アヴィケブロンのゴーレムは一人も殺さずに退けた。首領はカリュドーンの魔獣の力を得たアタランテ・オルタで、不殺を見届けて一行を迎え入れる。彼女に一行の記憶はなく、三か月前に上書きされたロシアの断末魔に呼ばれたという。

叛逆軍の砦には、村を焼かれて逃げてきた子供や老人も多かった。一行は遊軍として村々へ檄文を配り、三つの村のうち二つから協力を取りつける。残る一つは盗賊に滅ぼされていた。協力した村の一つは盗賊を斬った放浪者に救われており、その放浪者はカルデアの者と名乗っていた(この場面を読む)。

ボーダーに戻ると、ホームズはここを特異点とは呼べないと判断した。特異点は歴史の切り替えの一点だが、このロシアの切り替えは四百五十年前に済んでいる。ヤガは国と文明を築き、魔力で威力を上げた魔獣用の銃まで持っていた。もしもの分岐がそのまま続いた現代だと分かる(この場面を読む)。

同じ夜、ダ・ヴィンチはマシュの霊基から英霊ギャラハッドが去ったと伝えた。マシュの体はデミ・サーヴァントとして成り立っているのに、彼女は盾を思うように構えられない。ダ・ヴィンチは、相手が何の非もない隣人でも戦えるかと問い、翌朝マシュをナビゲーターに戻した。

無頼の村​

アタランテは、逃亡兵や元貴族が集まるもう一つの勢力と手を結ぼうとした。率いるのは三か月前に召喚されたベオウルフとビリー・ザ・キッドで、二人とも北米で会った記憶を持たない。互いのヤガが合流を受け入れないため、両軍は別働隊として同盟を結んだ。連絡役としてビリーが叛逆軍に移り、ベオウルフが首都近辺で陽動を起こす策が決まる。

往路の野営で、パツシィはヤガになるまでの経緯を話した。魔獣の力に溺れた者や病んだ者、やがては弱者そのものを糧にして、ようやく今のヤガができたという。名の由来は人を食い殺すスラヴの妖婆バーバ・ヤガーで、自分たちのしたことを忘れないための名だった(この場面を読む)。

同じころ首都では、雷帝が神父に胸の内を明かしていた。異境の神から異聞を広めよと啓示を受けたものの、世界を凍らせてまで統べる気はないという(この場面を読む)。雷帝は空想樹の力を好まず、そのため樹は根付かないまま残った。神父はその後、空想樹が雷帝に倒される心配はなくなったと、言葉の通じない異星の巫女に告げている。コヤンスカヤは痩せた土地に用はないと言って、次の派遣先へ去った。

スモレンスクの略奪​

殺戮猟兵に隠し倉庫を焼かれ、叛逆軍の食料が尽きかけた。ヤガは三日食べなければ餓死する。アタランテは、親皇帝派の都市ヤガ・スモレンスクから食料を取り立てると決めた。アヴィケブロンは虐殺に転じる恐れを説き、ゴーレムの核を街に仕込んで備えた。

取り立ては半分で話がついたものの、叛逆軍と市民が街中で衝突し、そこへより強い殺戮猟兵の増援が乱入した。市長は殺され、叛逆軍は箒を持った市民まで撃ち、穀物倉庫の粉塵爆発で火の手が上がる。アヴィケブロンが街中のゴーレムを起こして武器を奪い、殺戮猟兵を潰したので、死者はそこで止まった。叛逆軍は予定の七割の食料を運び出した。

撤退の途中、パツシィは母の安否を確かめに家へ走った。母は、息子が叛逆軍に加わった報いとして市民に石で打ち殺されていた(この場面を読む)。パツシィは自分のせいではないと繰り返し、一人で姿を消す。叛逆者の家族をこの街が許さないことは、彼自身が知っていたと分かる。

同じころ、キリシュタリアの神霊サーヴァントであるカイニスがカドックを訪ねた。ロシアの空想樹だけが根付いていないと責められ、カドックは皇帝が必要を認めていないからだと答える。カドックは、逆転の下地はもう作っていると言い添えた。

異聞の帯​

砦に戻った一行は、ヤガ・トゥーラに派遣された敵のサーヴァントを討ちに出た。道中には、雷帝に上から押し潰されて大穴になった村が残っていた。トゥーラの古い教会で待っていたのは、アマデウスを名乗る仮面のサーヴァントである。マシュの観測で別人と分かり、現れたカドックがその名をサリエリと呼んだ。

カドックは、クリプターは異聞帯を育てて汎人類史を終わらせると告げた。ここは点ではなく帯で、分かれ道はとうに過ぎて歴史が続いているという(この場面を読む)。カドックはマスターに、なぜ自分たちの代わりに死ななかったのかと問うた。人理焼却で最も多くの犠牲を出したのは君だとも言い、マシュがそれに反論した。

カドックが呼んだキャスターは、南極のカルデアを氷漬けにした皇女アナスタシアだった。彼女は精霊ヴィイの魔眼でゴーレムを塵に変え、一行を追い詰める。記憶を取り戻したサリエリが宝具で割って入り、アヴィケブロンは雪のゴーレムで隙を作って全員を連れて逃げた。カドックはその後、叛逆者を匿った罰としてトゥーラを潰すよう殺戮猟兵に命じている。

逃げ延びた夜、ホームズはサリエリの口にした異聞帯という語から推論をまとめた。異聞帯は本来なら百年で打ち切られるはずの歴史が今まで続いた世界で、汎人類史に敗北した歴史だという(この場面を読む)。ダ・ヴィンチは剪定事象の仕組みを説き、これを異聞帯による地球そのものへの攻撃と呼んだ。

アントニオ・サリエリは、上書きされた土地の断末魔に呼ばれたはぐれで、頭を弄られていたと明かして一行に加わる。彼によれば、雷帝の師マカリー枢機卿を名乗る神父は、日本人とおぼしき疑似サーヴァントだった。神父は空想樹を異聞帯の要と呼び、空想樹なしに現実への侵攻は無いと話していた。

砦の陥落​

叛逆軍は首都との中間の谷に新しい砦を築き、首都へ三日で迫れるトンネルを掘った。トンネルの鉱石で、アヴィケブロンはボーダーの装甲と予備の装甲を作れるようになる。マスターたちが修理のためにボーダーへ戻ったあいだに、新しい砦は神父と殺戮猟兵に襲われた。神父は樹齢四百年の霊木より古い宝具を入口にして、砦の内側へ兵を送り込んだ(この場面を読む)。

駆けつけた一行の前に神父が現れ、真名をマカリーと名乗った。神父の説明では、殺戮猟兵は雷帝の宝具で、雷帝が動かないかぎり尽きずに呼び出される。叛逆軍のうち捕らえたのは二割ほどで、残りの大半は異聞帯のミノタウロスが喰らっていた。砦の場所を漏らしたのはパツシィだと、神父は告げた。

ミノタウロスの迷宮に閉じ込められたマスターとビリーは、そこでパツシィと再会する。パツシィは神父に雷帝の姿を見せられ、心が折れて砦の場所を喋っていた(この場面を読む)。拷問は受けておらず、二度と雷帝に会わずに済むなら何でもすると思ったという。迷宮では殺戮猟兵に囲まれたところへ宮本武蔵が飛び込み、マスターと仮の契約を結んだ。辻斬りの噂も、カルデアの者と名乗った放浪者も、三か月前からロシアにいた武蔵だった。

マスターはパツシィを責めず、再び同行を許した。ビリーは、一度裏切った者は二度裏切ると反対している。アヴィケブロンだけは迷宮の外に残され、カドックから願いを叶えるという交渉を受けていた。

処刑の日​

迷宮を出た一行に、ベオウルフが自分の村のヤガを独り立ちさせて加わった。アタランテは子供を人質に取られて降伏し、サリエリとともに昔の砦を使った牢獄へ運ばれていた。牢獄でカドックはアタランテに、雷帝を倒すため手を組もうと持ちかける。切り捨てられたこの世界を守るにはカルデアも倒すしかないと説かれ、アタランテは話を聞いた(この場面を読む)。

ボーダーがロシアを横断して迎えに来て、一行は牢獄へ向かった。牢獄は三日ほど前に空になっていて、五日後に首都で二人を処刑するというカドックの書き置きが残っていた。罠と承知で、一行は首都を目指す。出発の前、パツシィはマスターと二人きりで、なぜいつも笑っていられるのかと問いただした。パツシィは、マスターが絶望するところを見届けると言ってついてきた。

首都を前にした夜、武蔵はマシュの迷いを聞いた。武蔵の見立てでは、カルデアの一行は皆に望まれる戦いしか知らず、相手に憎まれる戦いを知らなかった(この場面を読む)。悩み続けることは最後には力になると、武蔵はマシュに言った。マスターが首都へ発ったあと、マシュは自分から申し出てダ・ヴィンチの調整を受けている。

処刑の場でカドックは、ミノタウロスに首を刎ねさせると告げた。一行はミノタウロスが迷宮を開く瞬間に飛び込み、迷宮の中でアタランテと合流して枷を断つ。ベオウルフたちがミノタウロスを倒したあと、アヴィケブロンが現れた。彼はカドックに雷帝を見せられており、あれは人類ではなくヒト以前の霊長だと話す。崩れかけた迷宮をゴーレムの素体にし、炉心には自分自身を使うという。

アヴィケブロンは、聖杯戦争で自分のマスターだった子供を殺した記録を打ち明けた。人理の役に立てるのはこの刹那だけだと言い、巨人の命令権をマスターに渡して迷宮ごとゴーレムになる(この場面を読む)。最後にマスターへ、人間には責務に耐える強さがあると信じていると告げた。

雷帝の目覚め​

アナスタシアは逃げようとするパツシィを呼び止め、雷帝は自分たちが倒すと明かした。巨人の出現で首都が騒ぎになり、眠っていた雷帝が目を覚ます。夢から生まれた殺戮猟兵は、その場で塵に戻った。立ち上がった雷帝は山のような巨象で、首都の北東にあったアレクサンドロフは、眠る雷帝の変異とともにこの世から消えていた。

神父によれば、雷帝はロシアの凍土で見つかった最古の巨大生物と結合し、今も成長を続けている。カドックは一行に、雷帝はもう目覚めるたびに破壊を撒く災害だと言った。叛逆軍とカルデアとクリプターの誰もが雷帝を討つしかない舞台は、カドックが整えたものだった。カドックは、雷帝が空想樹を根付かせないまま他の異聞帯へ攻め込む気でいると見て、討つと決めていた(この場面を読む)。

雷帝の眠りを保っていたのは、アマデウスのピアノだった。サリエリの回想では、アマデウスは二か月のあいだ休まずに弾き続け、霊基が尽きる前にサリエリへ後を託した。サリエリが一時アマデウスを名乗っていたのは、そのときアマデウスがかけた呪いによる。

巨人と雷帝の殴り合いでは、雷帝に傷一つ付かない。神父が切り札として差し向けたのはサリエリで、彼は宮殿のピアノに憤怒だけを叩きつけた。その演奏が雷帝の心を縛り、雷撃の矛先は宮殿へ向いた。そこへボーダーが瓦礫を越えて到着し、霊基外骨骼オルテナウスを着けたマシュを射出する。マシュは新しい宝具で雷撃を受け止め、続いて武蔵が雷帝の鼻を両断した。武蔵はその一太刀を最後に、別の世界へ漂流して消えた。

マシュは、自分たちの行いが残酷な勝利宣言ではないかと迷ったまま前に出た(この場面を読む)。答えは出ないまま、目の前の信頼を手放さないことだけを決めたと取れる。マスターはゴーレムの肩から指示を出し、雷帝の王冠を掴ませて引き剥がした。

雷帝の問い​

王冠を失った雷帝は、まずアナスタシアと戦って敗れた。雷帝は自分の時代が落日したと認め、マスターに尋ねることがあると言って一人で歩き出す。同じころカドックは、神父の真名をグレゴリー・ラスプーチンと見抜いた。神父は、ラスプーチンの望みはアナスタシアの即位で、果たされた今は役割を終えたと答えて去る。

雷帝の問いは、ここで苦しむ民を一人残らず殺してまで、おまえの世界を取り戻す価値があるのかというものだった。汎人類史が消えたことでこの世界は復活し、もう少しで剪定されると雷帝は理解していた(この場面を読む)。雷帝はマスターの無知を最大の罪と呼び、ヤガすべてに死ねと命じる権利があるのかと重ねて問う。マスターは答えを出せなかった。

最後の戦いに敗れた雷帝は、他者の不幸に泣けるマスターを見て、亡き正妃アナスタシアも同じ女だったと思い出す。その余分を失ったことが、この世界の敗因だったと雷帝は悟った(この場面を読む)。雷帝はマスターの勝利を認めて消え、ホームズもダ・ヴィンチもマシュも、雷帝の言い分は正しいと認めた。

直後、カドックの合図でアタランテが寝返った。叛逆軍の子供たちを人質に取られた彼女は、彼らを見捨てられないとカドックの側に立つ。叛逆軍のヤガが銃を構えたとき、パツシィがマスターの前に飛び出して撃たれた。パツシィは、強いだけの世界に負けるな、おまえたちの世界の方が美しいと言い残して死ぬ。

マスターとマシュは立ち上がり、駆けつけたビリーがアタランテに早撃ちの決闘を申し込んだ。討たれたアタランテは、この異聞帯が汎人類史にとっての悪で、いずれ切除するしかないと知っていたと叛逆軍に詫びる。叛逆軍のヤガも、彼女が毎夜泣いていたことを知っていたと答えている。

空想樹オロチ​

雷帝が倒れて皇帝となったアナスタシアは、大地を操る特権である非常大権を手にした。カドックはこれで空想樹オロチを接続し、汎人類史を終わらせて異聞帯を広げると宣言する。雷帝は旧来の神を信じ続け、空想樹という楔を拒んだまま眠っていた。カドックがアナスタシアを帝位に就けようとしたのは、この特権を得るためだった(この場面を読む)。

カドックとアナスタシアは一行に敗れた。カドックは最後の切り札の大令呪を使おうとし、ビリーの銃弾が先に放たれる。その弾を受けたのは、身を投げ出したアナスタシアだった。彼女はサーヴァントとして当然のことをしたと言い、後悔を抱いて生きよとカドックに命じて消えた。カドックは生きたまま捕らえられる。

空想樹からは神代に近い魔力があふれ出し、ホームズは根付く前の伐採を命じた。ボーダーの余剰魔力を受けたサーヴァントたちは、上空5000メートルの熱源を目指して飛ぶ。熱源が消えたあと、直径300メートルの幹の根元に一行は女の人影を見た。ボーダーの計器には、そこに人一人分の空白しか映らない。空想樹はそのまま崩れ、跡から疑似聖杯が見つかった(この場面を読む)。

空想樹と同時に嵐の壁も消え、ホームズは空想樹の切除を異聞帯での作戦の目的に定めた。マシュは、これから先は世界を救う旅ではなく、滅ぼして自分たちの世界を生かす旅だと言う。ロシアの空は青く晴れ、夜にはサリエリがアマデウスに頼まれたきらきら星をヤガに弾いた。異聞帯は幾夜かのうちに、初めから無かったものに戻るという。

ボーダーがロシアの境界を抜けると、外の地表は一面の白だった。そこへ彷徨海バルトアンデルスから、正しい歴史の生存者に合流を求める通信が届いた。通信には、合流のための座標が添えられていた。

得たもの/失ったもの​

得たもの
人理
ロシアの空想樹オロチを伐り、嵐の壁が消えた
マシュマスター
人理
空想樹の切除が、異聞帯での作戦の目的と定まった
ホームズ
カルデア
崩れた空想樹の跡で、疑似聖杯を回収した
マシュ
カルデア
クリプターのカドックを生きて捕らえた
ビリーカドック
カルデア
トンネルの鉱石でボーダーの装甲が直り、ロシアの外へ出た
アヴィケブロンダ・ヴィンチ
カルデア
彷徨海バルトアンデルスから、合流を求める通信が届いた
ムニエル
人物
マシュはオルテナウスを着けて前線に戻り、新しい宝具を開いた
マシュダ・ヴィンチ
人物
サリエリはアマデウスの頼みどおり、ヤガにきらきら星を弾いた
サリエリアマデウス
失ったもの
人理
ロシアのヤガは幾夜かのうちに、初めから無かったものに戻る
カルデア
滅ぼす覚悟を問う雷帝に、マスターは答えを返せなかった
マスターイヴァン雷帝
人物
パツシィはマスターをかばって撃たれ、死んだ
パツシィ
人物
アヴィケブロンは自らを炉心にして巨人となり、巨人ごと崩れた
アヴィケブロン
人物
アタランテは子供たちのために寝返り、ビリーに討たれた
アタランテ〔オルタ〕ビリー
人物
アナスタシアはカドックを銃弾からかばって消えた
アナスタシアカドック
人物
アマデウスは雷帝の夢のために二か月弾き続け、力尽きた
アマデウス
人物
武蔵は雷帝の鼻を断ち、別の世界へ漂流した
宮本武蔵
人物
叛逆軍は砦を破られ、大半がミノタウロスに喰われた
ミノタウロス
人物
ベオウルフとビリーは戦いのあとに消えた
ベオウルフビリー

雷帝の問いに、マスターは最後まで答えを返していない。パツシィが死に際に残したのは、勝てではなく負けるなという言葉だった。マシュはそこから、人理を守る責任と生き残る責任を受け取った(この場面を読む)。

カドックを動かしていたのは、Aチームの八番目という劣等感と、人理を救ったのが補欠のマスターだったことへの妬みである。その彼を最後に生かしたのは、彼を信じたアナスタシアだった(この場面を読む)。

関連​

用語集の該当ページ。

中心人物。

前後の章。

出典: ゲーム内シナリオ全文コンコーダンス(tools/data/concordance/lines.jsonl、war 301 の本編スクリプト 0300010010〜0300012341)。