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亜種並行世界 屍山血河舞台 下総国

時代
寛永十六年 / 徳川家光の治世
舞台
下総国の土気城と城下。上総の廃城のはずが、下総の大城として栄える
脅威
妖術師と英霊剣豪七騎。特異点でない世界から、カルデアの人理まで侵す
聖杯
厭離穢土城。討たれた英霊剣豪と民草の魂を溜め、土気城を穢土の城に変える
勢力
妖術師と英霊剣豪
香取神宮の伴天連妖術で揃えた七騎。リンボが一切鏖殺の宿業を埋め込む
土気城と城下
松平下総守の城。城下は第二の江戸と呼ばれるほど栄えている
清姫(松平下総守の娘)おたまおぬい田助
カルデアと同行者
夢を通じて下総に落ちたマスターと、現地で出会った協力者
主要人物
宮本武蔵千子村正風魔小太郎加藤段蔵天草四郎時貞(妖術師)柳生但馬守宗矩キャスター・リンボ佐々木小次郎(長刀の剣士)

発生タイムライン​

  1. 到着の約ふた月前
    村正が下総に現界し、同じ頃に黒い化生が出始める
    千子村正
    変化田畑の里人の半数が死に、おぬいと田助の両親も死ぬ
  2. カルデアでマスターが倒れ、目を覚まさなくなる
    マシュホームズ
    変化体に異常はなく、回復の魔術を重ねても目覚めない
  3. 寛永十六年・到着当日
    田んぼで武蔵と再会し、槍の胤舜から寛永十六年の下総と知る
    宮本武蔵宝蔵院胤舜
    変化聖杯が下総にあると見て、帰るより先に異変を追う
  4. 到着当日
    胤舜が囮に残り、リンボに英霊剣豪へ変えられる
    宝蔵院胤舜キャスター・リンボ
    変化胤舜はプルガトリオとなり、西と北の里を皆殺しにする
  5. 到着の翌朝
    武蔵が鍛冶師の刀でプルガトリオの宿業を断つ
    宮本武蔵千子村正
    変化鍛冶師は千子村正。刀は明神切村正として武蔵に渡る
  6. 到着2日目
    土気城下で清姫に会い、路地で倒れていた小太郎を拾う
    風魔小太郎清姫
    変化小太郎はマスターを連れ戻しに来た唯一のサーヴァント
  7. 到着3日目の朝
    柳生但馬守が五百余名で土気に入り、首魁の討伐を命じる
    柳生但馬守加藤段蔵
    変化隠密の段蔵が案内役として一行に付く
  8. 到着3日目
    村々を焼いて北上したインフェルノを、武蔵が斬る
    宮本武蔵巴御前
    変化真名は巴御前。義仲を思い出して消える
  9. 到着4日目の夜
    パライソが土気城に忍び込み、蛇の妖術で侍を呑む
    望月千代女風魔小太郎
    変化妖術師は下総国を生贄にすると宣言する
  10. 到着5日目
    清姫を操ったパライソを、武蔵が斬る
    宮本武蔵望月千代女
    変化真名は望月千代女。甲賀三郎の呪いを継いでいた
  11. パライソ戦後の夜
    黒縄地獄が荒川東岸の幕府軍一万を討つ
    源頼光酒呑童子
    変化生き残りは一名。二騎は続けて相模国の町々を滅ぼす
  12. さらわれた翌日の昼前
    裏山の頂きで鬼の二騎を倒し、おぬいと田助を取り戻す
    源頼光酒呑童子
    変化武蔵が宿業を斬る感覚を掴む。残る英霊剣豪は二騎
  13. 決戦の日の朝
    土気城が厭離穢土城に変わり、城下の人々が怪物になる
    天草四郎時貞キャスター・リンボ
    変化妖術師は剪定事象の島原を生き延びた天草四郎時貞
  14. 決戦の日
    リンボに操られた段蔵が自爆し、武蔵が右目を傷つける
    加藤段蔵風魔小太郎
    変化段蔵は小太郎の育ての母だった
  15. 決戦の日
    エンピレオの正体は柳生但馬守。武蔵が奥義を開いて破る
    宮本武蔵柳生但馬守
    変化最後の英霊剣豪が倒れる
  16. 決戦の日
    村正の都牟刈と小太郎のクナイが天草を討つ
    千子村正天草四郎時貞
    変化城が燃え落ちる。村正は宝具を使って消える
  17. 決戦の日
    武蔵が長刀の剣士、佐々木小次郎を破る
    宮本武蔵佐々木小次郎
    変化武蔵はマスターを城外へ逃がし、炎の中に残る
  18. 帰還の後
    記録映像本編を読む
    カルデアに戻ったマスターに、武蔵の記録映像が届く
    宮本武蔵巌窟王
    変化武蔵は英霊としてカルデアに着き、旅に出ていた

この章について​

寛永十六年の下総国は、マスターの知る歴史と少しずつずれている。上総の廃城だったはずの土気城が下総の大城として建ち、城下は第二の江戸と呼ばれるほど栄えている。暦の上では徳川家光の治世で、宮本武蔵は西暦にして1639年と言い添えた(この場面を読む)。島原の乱は前年に終わり、世は泰平に入ったばかりだった。

この下総は特異点ではない。カルデアで昏睡したマスターの夢が、どこか実在の場所とつながった。シャーロック・ホームズは、人類史の過去でも人理の特異点でもない場所と見て、実在と夢想の狭間と呼ぶ。風魔小太郎も、聖杯で歴史が狂った形跡はなく、前提から違う世界だと感じていた。最後に姿を見せたキャスター・リンボは、剪定事象とも並行世界とも違うと言い切っている。

異変を起こしたのは、英霊剣豪七騎を従える妖術師である。妖術師は香取神宮で伴天連妖術を行い、聖杯で喚ばれた英霊にリンボが一切鏖殺の宿業を埋め込んだ。宿業を負った英霊は人を殺し続け、討たれた魂は聖杯である厭離穢土城の礎になる。妖術師の正体は、剪定事象の世界から来た天草四郎時貞だった。島原でただ一人生き延びた生身の人間で、英霊の天草四郎とは別人である。

同行した武蔵は、世界を渡り歩く生身の剣士である。一行は七騎の英霊剣豪のうち六騎を討ち、武蔵は最後に柳生但馬守宗矩と佐々木小次郎を破った。武蔵が求めていたのは、形のないものを斬る空の境地、零の剣である。下総で武蔵はその境地に届き、燃える城の中に姿を消した。

天草を斬ったのは、庵で刀を打っていた千子村正の宝具である。村正は人の手でなく世界に喚ばれたサーヴァントで、宝具を使った代償に消えた。小太郎だけがカルデアから下総へ来られたのは、この世界に加藤段蔵がいたからだった。段蔵は小太郎の育ての母で、リンボの手先として一行に近づいていた。

章の流れ​

田んぼの再会​

カルデアでは、マシュが地下ライブラリから『五輪の書』の原文の画像を見つけた。その話の最中にマスターが倒れ、目を覚まさなくなる。体には異常がなく、回復の魔術を重ねても瞼は開かない。ホームズは、以前にも同じ昏睡があったと知って捜査に乗り出した。

マスターが目を開けると、そこは田んぼで、落ちてきた体を武蔵が受け止めていた。武蔵は鬼ヶ島以来の再会を喜び、護衛を買って出る。武蔵自身も一日前に着いたばかりで、一度訪れた世界には戻れないという。二人は孤児の姉弟おぬいと田助に会い、ここが下総国だと知った。昼の空が暗くなるたびに悪霊が湧き、それを槍で払ったのが宝蔵院胤舜である。胤舜は二日前に香取神宮の敷地で現界し、召喚者を知らなかった。

武蔵の知る土気城は、豊臣の頃に廃れた上総の城である(この場面を読む)。武蔵の渡る世界は、たびたび彼女の知る歴史からずれる。この下総も同じ類だと、武蔵は受け止めた。カルデアとの通信は途絶え、サーヴァントも喚べない。

マスターは、聖杯が下総のどこかにあって化生を湧かせていると見た。帰るのを後回しにして異変を追うと決め、武蔵も最後まで付き合うと約束する。胤舜は、姉弟を庵へ送り届けるまで同行すると申し出た。

七騎目の槍​

妖術師とリンボは、英霊剣豪がまだ一騎足りないと確かめ合っていた。リンボが昼の太陽を沈め、空に赤い月が昇る。逃げる途中でマスターの令呪が熱を帯び、カルデアのサーヴァントを喚べるようになった。竹林で一行を囲んだのは、リンボを含む六騎の英霊剣豪である。頭目の剣鬼は胤舜の身柄を求め、残る生者は皆殺しにすると告げた。胤舜は自ら囮に残り、マスターに姉弟を背負わせて逃がす。

胤舜の槍は剣鬼の心臓を貫いたが、剣鬼は倒れなかった。リンボは五芒星で胤舜を縛り、宿業を埋め込んで英霊剣豪に変生させる。胤舜こそ、香取神宮で召喚された七騎目だった。変生した胤舜はランサー・プルガトリオと名乗って一行を追う。武蔵が首を落としても、プルガトリオは首を拾って元に戻した。一行が積み藁に隠れた里も含め、プルガトリオは西と北の二つの里を皆殺しにした。

姉弟を預かる庵の主は、若い姿の鍛冶師だった。武蔵は鍛冶師が失敗作と呼ぶ刀を借り、プルガトリオと立ち合う。プルガトリオは屍山血河の死合舞台を広げ、骸の真名を宝蔵院胤舜と名乗った。武蔵の刀は、心臓でも魂でもない定めのようなものを断つ。胤舜は武蔵に礼を言って消え、外では一晩が明けていた。

鍛冶師が目指していたのは、縁と定めと業を切る刀だった(この場面を読む)。英霊剣豪は首を落としても死なず、斬れたのは宿業を断つ刀だったからと分かる。鍛冶師はセイバーの千子村正と名乗り、刀の銘は明神切村正だった。

胤舜は一行を逃がすために残り、宿業に呑まれて敵になった。武蔵は自分の腕で勝ったのではないと認め、明神切村正を譲り受ける。英霊剣豪の霊核に届く刃は、さしあたりこの一振りしかない。

土気の城下​

翌朝、村正は自分を喚んだのは人ではなく神だと話した。村正が下総に現界したのは二月ほど前で、同じ頃に黒い化生が出始めた。田畑の里人の半数が死に、おぬいと田助の両親もその中にいた。行商の噂では、香取神宮で怪しい男が伴天連の妖術を行い、北の常陸国はすでに焼け野原だという。

一行は情報を求め、街道を半日歩いて土気城下へ向かった。城下では、玉藻の前によく似た芸妓のおたまと、松平下総守の娘の清姫に出会う。清姫はマスターを運命の人と呼び、城を抜け出していた。白髪の宣教師に促されて路地を覗くと、魔力の尽きた小太郎が倒れていた。

その夜更け、城下にアーチャー・インフェルノが現れた。インフェルノは徳川の世のすべてを燃やすと言い、武蔵と弓で渡り合う。町中では加減せよと命じられていたため、インフェルノは途中で姿を消した。

小太郎は、眠り続けるマスターの意識を連れ戻しに来た(この場面を読む)。ほかのサーヴァントは下総へ来られず、ダ・ヴィンチとホームズは縁の問題を疑っていた。宣教師は、英霊剣豪の忌名がダンテをなぞると指摘する。エンピレオとパライソを分けた名付けに、宣教師は涜神の気配を見ていた。

妖術師の狙いは、敵の側の会話で分かる。妖術師は、斃れた英霊剣豪の魂が聖杯の厭離穢土に宿ると告げた(この場面を読む)。リンボは、恨みと哀しみにまみれた魂が多いほどよいと言い、そのための一切鏖殺だと付け加える。リンボは配下のからくり、加藤段蔵に、江戸から来る侍衆へ公儀の隠密として潜り込めと命じた。

小太郎が加わり、マスターとカルデアをつなぐサーヴァントは小太郎だけになった。一行は宿を持たず、おたまの部屋に転がり込む。

巴御前​

城下を去ったインフェルノは、行き会った老夫婦を見逃したあと、漁村を一つ焼き尽くした。そのまま黒い怪異の軍勢を率い、村々を焼きながら北へ進む。

翌朝、柳生但馬守が幕府の命を受け、島原帰りの侍五百余名を連れて土気に入った。但馬守は半年前に武蔵と立ち合っていて、武蔵はこの世界に二度来ていたと知る。武蔵が一度訪れた世界へ戻ったのは、これが初めてである。但馬守は侍四百で城下の南を固め、一行には百余名の侍を陽動にして首魁を討てと命じる。案内役に付いた段蔵は、百年を超えて動くからくり人形だった。小太郎は段蔵を見て顔色を変え、自分を覚えていないのかと漏らしている。

峠を越えて軍勢の背後に回ると、侍衆はインフェルノの炎に焼かれていた。武蔵が割って入り、インフェルノが叫んだ義仲の名から真名を言い当てる。木曾義仲に寄り添った女武者、巴御前である。巴は死合舞台を広げ、武蔵の刀に斬られた。

段蔵の記録では、宿業は巴の霊基を設計どおりに書き換えていた。ただし巴には効きすぎて、命じられた務めまで忘れて暴れ出した(この場面を読む)。巴自身は、生前は尼となって義仲を弔い、穏やかに死んだはずだと思い返している。倒れる間際に義仲の言葉を思い出し、もう薪にならずに済むと安堵して消えた(この場面を読む)。英霊剣豪が見せる憎しみは、宿業で増幅されたものと分かる。

怪異の群れは総崩れになり、侍衆が掃討にかかった。段蔵は但馬守の隠密として、そのまま一行のそばに残る。

姫と蛇​

土気城に清姫を殺すという文が届き、城下の一枚摺がそれを広めた。文を届けたのはアサシン・パライソで、但馬守の侍十人の首を添えていた。清姫は一行に護衛を頼み、但馬守が腕前を請け合って一行は城に詰める。その夜、パライソは城に忍び込み、蛇の妖術で侍二十余名を呑んだ。

パライソは、妖術師が下総国を生贄にすると告げる。小太郎はパライソを打ち負かしたが、英霊剣豪は首を落としても死なない。武蔵が投げた村正の刃も浅く、パライソは幻と入れ替わって逃げた。

翌日、但馬守は眠る清姫を見通しのよい広間に寝かせ、侍衆で固めた。前夜のうちに、バーサーカー・衆合地獄が妖術師の命で大蛇の力をパライソの心臓と脳につないでいた。再び現れたパライソは霊基を暴走させ、伊吹の神のかけらだという大蛇を喚ぶ。清姫は炎でマスターを焼こうとし、小太郎が身を挺してかばった。小太郎は、前夜にパライソが投げた二本のクナイが清姫への仕掛けだったと見抜く。

操られた清姫は、伊吹の御山で蛇の巣を荒らした先祖の罪を、自分の記憶として口にした(この場面を読む)。武蔵はそこから甲賀三郎の呪いを思い出し、甲賀望月家の女忍び、望月千代女の名を言い当てる。千代女は、誰も自分を罰してくれないと叫んで武蔵に挑んだ。斬られた千代女は、やっと安らげると言い残して消える。姫の殺害予告は、人心を怯えさせて贄の魂の質を上げるための手だった(この場面を読む)。

清姫は命を取り留め、小太郎はパライソのクナイを手元に残した。武蔵は、胤舜と巴に続いて千代女まで踏みにじった相手への怒りを口にする。英霊剣豪の残りは四騎になった。

荒川と鬼の二騎​

パライソを討った後の夜、衆合地獄は城に残る大蛇の残滓を汲み上げ、段蔵がそれを手引きした。同じ夜更け、但馬守の報せで荒川東岸に集まった幕府軍一万を、黒縄地獄が襲う。一万二百四十五名のうち、生き残ったのは若い旗本一人だけだった。二騎はそのまま相模国へ向かい、昼までに鎌倉や小田原の城下を滅ぼした。

但馬守に城を出された一行は、村正の庵に戻ってこの噂を聞いた。その夜、厠に出たおぬいが田助とともに鬼の二騎にさらわれる。マスターは、黒縄地獄が源頼光、衆合地獄が酒呑童子だと言い当てた。二騎ともカルデアに霊基のある英霊だが、ここでの二騎はマスターを知らない。二騎は、昼までに裏山の頂きへ来いと言い残して消えた。

裏山へ向かう途中、マスターは大蛇の尾に打たれて斜面を転げ落ちた。洞窟で目を覚ますと、酒呑童子が足首を手当てしていた。酒呑童子はそのあとマスターの腹を貫いて魔術回路をいじり、誰にも言うなと口止めする。翌朝、一行は山頂で二騎と立ち合った。武蔵は頼光を破り、酒呑童子も胸に大穴を開けて倒れる。

頼光は、子を殺すことがどうしてもできなかったと打ち明けた(この場面を読む)。前夜には酒呑童子が姉弟を喰おうとするのを、頼光が太刀で止めている。酒呑童子は喰ったと嘘をつき、倒れる間際には悪い鬼が勝つ話は誰も聞きたくないと笑った。二騎とも宿業に従いきれず、どこかで抗っていたと取れる。

姉弟は祠に匿われ、傷ひとつなかった。武蔵は頼光との斬り合いで、宿業を斬る感覚を掴む。妖術師は、聖杯の厭離穢土に五騎分の魂が溜まったと告げ、残るリンボとエンピレオに最後の務めを命じた。

厭離穢土城​

決戦の日の朝、リンボが再び太陽を消し、土気城が厭離穢土城に姿を変えた。リンボの術で、城下の人々は無作為に黒い怪物へ変わっていく。妖術師の素顔は、カルデアに霊基のある天草四郎時貞に似ていた。中身は、剪定事象の世界の島原でただ一人生き残った生身の人間である(この場面を読む)。天草は数多の世界を渡るうちに怨念として育ち、呼ぶ声に応えて下総に降りた。

一行は村正の馬で城下へ急ぎ、おぬいと田助をおたまに預けた。宣教師は、天守に囚われた清姫が儀式の触媒にされると教える。徳川の治世そのものを呪うには、徳川の傍流である松平の姫が要るという。

城内で段蔵は、自分が妖術師の側の忍びだと打ち明けた。一行はそれぞれ早くから気付いていて、そのうえで段蔵をそばに置いていた。段蔵は自分の意思で一行を城へ導いたと告げたが、現れたリンボの術に操られて武蔵に斬りかかる。リンボは、段蔵の記憶をかき混ぜて壊したのは自分だと明かした。段蔵は体内の絡繰を起動して自爆し、武蔵は右目に塞がらない傷を負う。動きが止まる間際、段蔵は小太郎にどこかで会ったはずだと問い、小太郎は段蔵を母上と呼んだ。

安倍晴明を名乗ったリンボは、武蔵を五芒星で縛って生きたまま英霊剣豪に変えようとした。マスターは礼装でその術を解き、武蔵はリンボの結界に傷をつける。小太郎は段蔵の体に込められていた初代風魔の魔力を受け、母の仇としてリンボを斬りつけた。

段蔵は果心居士が作り、初代風魔小太郎の忍術を積んだからくりである(この場面を読む)。朽ちていたところをリンボに拾われ、新しい主として仕えていた。小太郎は幼い頃に段蔵から忍びの技を教わり、段蔵の側はその記憶を失っていた。段蔵が一行の側に傾いたのは、姉弟がさらわれたときに胸が痛んだからだと本人が語っている。

段蔵を失った一行は、隻眼になった武蔵とともに天守を目指す。小太郎は、結局は母と呼べなかったと悔いつつ、主のそばで戦い続けると決めた。

剣豪勝負​

天守へ上る途中、段蔵の魔力を取り込んだ小太郎の術式が働き、カルデアとの通信がつながった。ホームズは、マスターの意識が夢を媒介にして、実在と夢想の狭間へ渡ったと推理する。世界を渡る者が二人そろえば異常が起こりうるとして、妖術師も武蔵と同じ移動特異点だと見た。

四階で、背後からリンボが武蔵を襲った。そのリンボを斬り伏せたのは、セイバー・エンピレオである。エンピレオは柳生但馬守その人で、霊基を持たない生身の人間だった。半年前に武蔵と立ち合って以来、但馬守は忠義も家も捨てた剣鬼になり、再び武蔵と斬り合う日を待っていた。武蔵はマスターと二人で但馬守と立ち合い、奥義の剣轟抜刀・伊舎那大天象を開いて勝つ。

天守の最上階では、村正と小太郎が清姫を取り戻していた。追いついた武蔵に、天草は世界からはみ出した同類だと言い放つ。天草は固有結界・島原地獄絵巻で一行を閉じ込め、厭離穢土城を完全に起動させた。村正は閉じ込められたまま、宝具の都牟刈村正で結界の向こうの天草を斬る。最後に小太郎が、パライソの遺したクナイで天草の心臓を貫いた。城が燃え始めるなか、村正は神ならぬ身で都牟刈を使ったために消える。

天守の反対側では、妖術師の用心棒だった長刀の剣士が武蔵を待っていた。武蔵は剣士を佐々木小次郎と名指しし、零の剣で燕返しを破る。武蔵はマスターを天守の外へ投げ落とし、自分は炎の中に残った。

天草は武蔵に、帰り道を失ったのではなく、武蔵の元の世界がもう失われていると告げていた(この場面を読む)。武蔵はそれを受け止めたうえで、同類でも見逃す理由はないと返している。村正は、自分が下総に喚ばれたのは世界移動者となった天草を斬るためだと合点した。天草も、特異点でない場所には抑止力の手が及ぶと認めている。刃が結界を越えたのは、穢土城が江戸城と語呂を合わせていたからで、村正は徳川に仇なす妖刀の銘だった。ホームズが言い当てた魔術回路の件も、ここでつながる。誰かがマスターの回路をなじませたという推理には、洞窟で腹を貫いた酒呑童子が当てはまると取れる(この場面を読む)。

英霊剣豪はリンボを除いてすべて倒れ、妖術師も討たれた。武蔵は零の剣に至り、帰る世界がないと知ったうえで炎の城に残った。

天元の花​

霊巌洞では、死を待つ老いた新免武蔵のもとに長刀の剣士が訪れた。剣士は、武蔵が自分の前で零の地点に達したと伝える。老人は剣士を佐々木小次郎と呼び、その話を聞いて息を引き取った。

厭離穢土城が崩れると、跡には元の土気城の残骸だけが残り、怪異も止んだ。城内に留まった人々は見つからず、マスターは瓦礫から武蔵が最後に付けていた刀の鍔を拾う。清姫は城より先に城下を立て直すと決め、おぬいは武蔵のような剣士になると言った。小太郎によれば、この世界の出来事は人類史に影響を与えられず、二度と来ることもできない。

同じ頃、斬られたはずのリンボが生き延びていた。真名は安倍晴明ではなく、晴明と敵対した陰陽師、蘆屋道満である。道満はカルデアへの現出に失敗したと嘆き、それでもよいデータが残せたと嗤った。英霊剣豪が仰いだサタンの名は、道満が冗談で付けた仮の名だった。

カルデアに戻ったマスターには、武蔵の記録映像が残されていた。武蔵は一度死に、青空の下で目覚めてから幾つかの世界を渡り、カルデアの外に着いたという。ホームズの見立てでは、この武蔵はカルデアの召喚式で現界した英霊で、契約は自動でマスターと結ばれている。武蔵は自分を下総の武蔵とは別の影法師と受け止め、しばらく旅に出ると言い残した。

道満はこの下総を、人類史にあって人類史にあらず、異なる星の神が観測した異界と呼ぶ(この場面を読む)。最後に道満が呼びかけた主の名は、伏せられたまま終わる。ホームズも、成立しないはずのイフの人類史の英霊をなぜ召喚式が扱えるのか、疑問を残した(この場面を読む)。

異変は止み、マスターは目を覚ましてカルデアへ戻った。下総で結ばれた武蔵との縁は、英霊の武蔵としてカルデアに残る。

得たもの/失ったもの​

得たもの
世界
厭離穢土城が崩れ、下総の怪異が止んだ
宮本武蔵マスター
世界
穢土の暗黒がカルデアの世界へ流れ込むのを防いだ
千子村正風魔小太郎
カルデア
昏睡していたマスターが目覚め、小太郎とともに帰還した
マスター風魔小太郎
カルデア
宮本武蔵が英霊としてカルデアに着き、マスターと契約が結ばれた
宮本武蔵
カルデア
後日の幕間を経て、加藤段蔵が霊基一覧に加わった
加藤段蔵
人物
武蔵は空の座、零の剣に至り、伊舎那大天象を開いた
宮本武蔵
人物
小太郎は段蔵から初代風魔の魔力を受け継いだ
風魔小太郎
人物
おぬいと田助は生き延び、清姫が城下の復興に当たる
おぬい清姫
失ったもの
世界
常陸は焼け野原。荒川の幕府軍一万と相模の町々も滅びた
源頼光酒呑童子
世界
城下の人々が怪物に変わり、城内の人々は行方知れず
キャスター・リンボ
カルデア
二度と下総には渡れない。村正の霊基は記録されない
千子村正
カルデア
リンボは蘆屋道満として生き延びた。サタンの正体も不明
蘆屋道満
人物
胤舜・巴・千代女・頼光・酒呑童子は宿業を負わされ、討たれた
宝蔵院胤舜巴御前望月千代女
人物
段蔵は小太郎を思い出しかけたまま、自爆して果てた
加藤段蔵
人物
村正は都牟刈を使い、おぬいと田助を残して消えた
千子村正
人物
武蔵は右目を傷つけ、元の世界はもうないと知り、城に消えた
宮本武蔵
人物
柳生但馬守は剣鬼となり、武蔵に討たれた
柳生但馬守

下総での出来事は、カルデアのライブラリには記憶されない。ダ・ヴィンチは記録としてだけ残すと約束し、英霊剣豪が口にしたサタンの正体は不明のままだと認めた(この場面を読む)。小太郎の説明では、カルデアと正確につながっているのは小太郎ひとりで、村正の霊基は記録されない。

段蔵の件には後日の続きがある。幕間「刃にてその心を断つ」では、段蔵の召喚がリンボの残した種のせいで失敗し、マスターと小太郎が本来の時代の風魔の里へ向かう。小太郎は里の墓を守り続けていた段蔵を介錯し、その後に段蔵が霊基一覧に加わった(この場面を読む)。

関連​

用語集の該当ページ。

中心人物。

前後の章。

出典: ゲーム内シナリオ全文(war 203 の本編スクリプト 0200030010〜0200031620 と、幕間「刃にてその心を断つ」の 9160190110〜9160190121)。