受肉
この用語は何か
受肉とは、霊体でしかない存在が生物としての肉体を得ることをいう。サーヴァントの場合、現界しているだけでは受肉ではない。この二語の差を最も丁寧に説明するのは静謐のハサンである。カルデアに留まる自分たちの体には血が通い、心臓も脳もある——だが同時に霊核もあり、その五体はエーテルに依るもので、マスターのように正しく肉体を持つ生物ではない。**現界は「この世に在ること」、受肉は「人間としての器を得ること」**であり、後者には聖杯のような願望器が不可欠だ、と彼女は言い添える。
- 〔だから私は、私として此処で死ぬ〕静謐のハサン —「私たちは霊基(カタチ)を伴ってカルデアに留まり、 人間のように暮らしています。」「貴方のように、 正しく肉体を持つ生物ではありません。」「真なる受肉……すなわち、完全な生物としての存在を 得るには、聖杯のような願望器が不可欠なのでしょうね。」 (この場面を読む)
受肉した存在に起きることは一貫している。霊体化ができなくなり、食事と睡眠が要るようになり、そのかわり自前で魔力を生成できるようになってマスターからの魔力供給が要らなくなる。代償も大きい。受肉した状態で死ねば、魂は英霊の座へ還らずそのまま消失する。そして歴史へ影響を与えうる実在物になるため、時代に残せば特異点の火種になる。裏を返せばそれは自由でもあり、エミヤは、生命として受肉したサーヴァントは生前のくびきから解き放たれ「今を生きる」その時代の人間になるだろう、と述べている。
対象は英霊に限らない。魔神、神獣、精霊、悪魔、そして『異星の神』まで、高次にいる存在が地上に器を得るという文脈であれば同じ語が使われる。一方で「一時的な受肉」という緩い言い回しもあり、Dr.ロマンはカルデアのサーヴァントが基地に存在の基点を持っている状態をそう呼ぶ。語の厳密な用法(聖杯級の願望器を要する真なる受肉)と日常的な用法(現界の言い換え)が併存しているのがこの語の扱いにくさである。
- Dr.ロマン —「彼らはカルデアからの魔力提供を受け、 この基地にそれぞれ存在の基点を作っている。」「言ってしまえば一時的な受肉だね。」
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意味 | 霊体存在が生物としての肉体を得ること |
| 現界との違い | 現界=この世に在る状態(体はエーテル製の仮の器)/受肉=生物としての器を得ること |
| 成立条件 | 真なる受肉には聖杯級の願望器が要る(静謐のハサン) |
| 得るもの | 自前での魔力生成(マスター不要)/時代への実在性 |
| 失うもの | 霊体化/死んでも座へ還れない(消滅する)/食事と睡眠が必要になる |
| 対象 | 英霊/魔神/神霊・神獣/精霊(真祖)/『異星の神』 |
| 変種 | 偽りの受肉(セイレムで強制されたもの)/「一時的な受肉」(カルデア常駐状態の俗称) |
| 主戦場 | 亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム(本編の言及の約四分の一) |
章別解説
第四特異点 死界魔霧都市 ロンドン
受肉という語が最初に本編へ現れるのは、魔術王が自らの手札を誇示する場面である。伝承にある使い魔があんな醜悪な肉の化け物のはずがない、とDr.ロマンが漏らしたのに対し、ソロモンは解釈が古いと切り捨て、七十二柱の魔神は受肉して新生した、だからこそあらゆる時代に投錨できるのだ、と明かす。
ここで受肉は、時代に錨を下ろすための条件として提示されている。霊的存在のままでは特定の年代に固定できない。肉を得て初めて、その時代に居座り、歴史を歪める重石になれる。ダ・ヴィンチは後にこの発想を「受肉した魔神を錨として時代に打ち込むとか、 ちょっと常人の発想じゃないからね。」と評している。人理焼却という事件そのものが、魔神の受肉という一手の上に成り立っている。
- 〔そして、霧の彼方にて〕ソロモン —「七十二柱の魔神は受肉し、新生した。 だからこそあらゆる時代に投錨(とうびょう)する。」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 第四特異点 死界魔霧都市 ロンドン
第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット
受肉が武器として意図的に引き起こされる唯一の場面である。呪腕のハサンは瀕死の体でトリスタンの腕を掴み、そこで自らの腕に掛けていた呪術を解く。彼の腕は魔神(シャイタン)からかすめ取ったもので、呪いによって御していたものだった。抑えが外れれば魔神は受肉し、盗人である自分と、贄であるトリスタンをともに食らう——彼は自分の体ごと相手を巻き添えにする形で、円卓最強の弓兵を仕留める。
決着後、辛うじて息のある彼は、受肉した魔神を見て「ただ食べるだけの、取るに足りぬ獣のようだ」と評する。受肉した存在が必ず強大になるわけではないという珍しい観測でもある。
- 〔レプリカ(4/5)〕呪腕のハサン —「我が腕は魔神(シャイタン)からかすめ取ったもの。 それを呪術で御し得ていたが―――」「魔神は受肉し、盗人である私と、 贄である貴様を食らうだろう。」 (この場面を読む)
- 〔レプリカ(5/5)〕呪腕のハサン —「あれは……受肉した魔神(シャイタン)、であろう…… ただ食べるだけの、取るに足りぬ獣のようだが……」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット
第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア
受肉が兵站の問題として説明される章である。ウルクに常駐する英霊たちの魔力をギルガメッシュひとりが賄っているのかとDr.ロマンが問うと、武蔵坊弁慶は否定する。召喚時こそギルガメッシュの魔力で霊基を構成したが、その後の維持は各人が受け持っている——人のように食べ、眠り、自ら魔力を生成して、と。ロマンはこれを一語で受け、受肉しているのだと納得する。たった一人で四騎もの霊基を維持できるはずがないからだ。
受肉とはマスターの負担をゼロにする運用形態でもある、というのがここでの読み方である。裏返せば、ギルガメッシュが前線に出られないほど消耗しているのは、それでも召喚の初期費用が桁違いだったからだということになる。
- 〔働くウルク民〕弁慶 —「その後の魔力維持は各々が受け持っております。 人のように食べ、眠り、自ら魔力を生成して、ですな。」 / Dr.ロマン —「……受肉している、という事だね? ふむ、それなら納得できる。」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア
終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン
この語のもっとも抽象的な用例が置かれる章である。玉座で正体を明かす男は、自分は魔術王ソロモンとして在ったもの、その分身であり、魔術師の基盤として創られた最初の使い魔であり——**ソロモンの遺体を巣とし、その内部で受肉を果たした“召喚式”**だと名乗る。すなわちゲーティアである。マシュはこれを、ソロモン王の死後にその遺体へ潜んで生き続けた“召喚式”という魔術そのものが、意思を持って受肉したものだと言い直す。
受肉するのは生物とも霊とも限らない。魔術という現象そのものが肉を得て一個の生命になる——人類悪ビーストⅠの成立は、この一語で説明されている。なお本章の回想ではマリスビリー・アニムスフィアが、聖杯戦争の勝者の権利として受肉して第二の生を望むのか、と自陣のキャスターへ問いかけている。受肉は願いとして提示されうるものだったという前提が、そこに確認できる。
- 〔光帯の玉座〕ソロモン —「ソロモンの遺体を巣とし、 その内部で受肉を果たした“召喚式”。」 (この場面を読む)
- マシュ —「ソロモン王の死後、その遺体(うちがわ)に潜み、 生き続けた“召喚式”という魔術そのものが……」 / (地の文) —「意思を持って、受肉したもの……!」 (この場面を読む)
- 〔プロローグ〕マリスビリー —「過去の改ざんは不可能だが、解釈替えぐらいはできる。 それとも受肉して第二の生を望むのか?」
→ 章別解説: 終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン
亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム
本編で受肉が主題になる唯一の章であり、この語の言及の約四分の一がここに集中する。ただし扱われるのは真なる受肉ではなく、その歪んだ模造品——偽りの受肉である。
異変はレイシフト直後に露見する。メディアが魔術的な知覚の鈍りに気づき、ロビンフッド・サンソン・マタ・ハリに霊体化できるかを試させる。誰もできない。マシュは反射的に受肉かと口にするが、ロビンフッドが即座に否定する——これは受肉ではない、仮初めの肉の器に押し込められている感覚だ、と。この訂正が本章の受肉論の出発点になる。得たのではなく、嵌められたのである。
代償はすぐに数字として現れる。サンソンは戦力が明らかに半減していることを認め、脆弱な、これではまるで人間の肉体だと評する。空腹を感じるようになり、食事をしなければ怪しまれるし、そもそも食べなければ戦えない——マタ・ハリはこれを魔力の転換効率が落ちていると言い換える。サーヴァントが食料の確保に苦労するという、他章ではまず起きない事態がここでは日常になる。なおメディアひとりがこの影響を免れており、サンソンはその理由をいずれ聞かせてほしいと釘を刺している。
ロビンフッドはこの状態を戦術上の縛りとして正しく評価している。すでに偽りの受肉という大きなペナルティを負わされている以上、街中を敵に回して自衛団に囲まれれば殺される可能性すらある。これまでの特異点で正解だった「いざとなれば力押し」が、ここでは最もまずい選択になる、と。受肉は本章において、暴力を封じるための足枷として設計されている。
そして最も重い代償が、死である。キルケーは、受肉後にサーヴァントが命を落とせば契約は失われ、その魂は座へ還ることなく消失すると説明する。マタ・ハリが自ら魔女裁判に従い、サンソンが処刑台へ向かうとき、メディアは念を押す——受肉している状態のサンソンは本当に死ぬ、あなたから契約解除されるのだ、と。キルケーはさらに、カルデアに召喚されてからの一切の記憶が失われると付け加える。セイレムの絞首台がサーヴァントに対して有効なのは、彼らが受肉させられているからである。処刑を止めるか見送るかという本章最大の選択は、この一点の上に成り立っている。
ダ・ヴィンチからの通信は、この強制的な受肉が肉体だけの話ではないことを告げる。セイレム侵入と同時にカルデア組の記憶は改竄——正確には認識を置換——されており、過去の記憶と現在の情報を正しく結びつけられない状態にある。マタ・ハリの死後、ロビンフッドが「これも受肉させられた影響だってんなら……」と自分の判断力そのものを疑い始めるのは、この報告と地続きである。
なお本章の黒幕である魔神ラウムは、セイレムを作るにあたって、この惑星には神性でも神秘でもない、さりとて受肉した悪魔でもない『伝承』が残されている、と語っている。彼が用いたのは受肉した実体ではなく、迷信と伝承だった。
- 〔アンノット 夜明け前〕マシュ —「まさか…… “受肉”されているんですか!?」 / ロビンフッド —「ちげーな。受肉じゃない。こいつは…… 仮初めの肉の器に押し込められているような感覚だ。」 (この場面を読む)
- 〔アンノット 夜明け前〕サンソン —「ええ。この、偽りの受肉の影響はかなり大きい。 脆弱な……これではまるで人間の肉体だ。」 (この場面を読む)
- 〔三つの結び目〕サンソン —「受肉のせいですね。 我々も食事をしなければ戦えない。」 / マタ・ハリ —「ええ。 魔力の転換効率が落ちている。」 (この場面を読む)
- 〔アンノット 夜明け前〕ロビンフッド —「すでに“偽りの受肉”という 大きなペナルティも負わされている。」 (この場面を読む)
- 〔三つの結び目〕キルケー —「きみとの契約は失われ、召喚された英霊の例に倣(なら)い、 その魂は“座”に還ることなく消失する。」 (この場面を読む)
- 〔六つの結び目〕メディア《マタ・ハリ》 —「受肉している状態のサンソンは、本当に死ぬわ。 あなたから契約解除されるのよ。」 (この場面を読む)
- 〔三つの結び目〕ダ・ヴィンチ —「『―――さきほど報告を受けた件、 強制的な“受肉”と関連する分析結果だ』」「『セイレム侵入と同時に、きみたちの記憶は改竄(かいざん)された。 より正確に語るなら、認識を置換されている』」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム
Lostbelt No.3 人智統合真国 シン
受肉が種族の定義そのものに使われる例である。無尽蔵の魔力を振るう虞美人を前に、ダ・ヴィンチは彼女が体内に魔力を蓄えているのではなく世界そのものからマナを吸い上げていることを見抜き、それが真祖——受肉した精霊だと説明する。津波やハリケーンと殴り合うようなものだ、と。真祖という存在は、精霊が肉を得たまま歩いている状態として定義されている。
終盤、虞美人が空想樹に霊基を吸い上げられていく場面で、ホームズは驚愕する——真祖が本質において精霊に類するのは確かだが、受肉した個体としての自我を捨てるのか、と。受肉は肉体の獲得であると同時に、個としての輪郭を持つことでもある、という含みがここにある。
- 〔百代の過客〕ダ・ヴィンチ —「それが真祖(しんそ)、受肉した精霊だ。 いや、中国産の真祖がいるとは!」 (この場面を読む)
- 〔紅の月下美人〕ホームズ —「確かに真祖とは本質において精霊に類する存在ではあるが ……受肉した個体としての自我を捨てるだと?」 (この場面を読む)
→ 章別解説: Lostbelt No.3 人智統合真国 シン
Lostbelt No.5 神代巨神海洋 アトランティス / Lostbelt No.5 星間都市山脈 オリュンポス
異聞帯編では、受肉が取引の対価として現れる。アトランティスでアストライアは、オリュンポス側につけばこの異聞帯における神の一柱として受肉できただろう、しかしそれでは天秤が偏りすぎるので拒絶した、と明かす。神として受肉するという選択肢が実在し、それを断ったことが彼女の中立の証になっている。
オリュンポスでは、同じ論理が敵の側で組み立てられる。カドック・ゼムルプスは『異星の神』がまだ実体を持っていないと見抜き、分霊にせよ端末にせよ実体があるならアルターエゴを使う必要がないはずだ、と推論する。そこから彼は、空想樹が育ちきれば『異星の神』の肉体になる、その地球降臨と地球での受肉は、クリプターたちを通じて取得した地球のデータを参照して作られるのではないか、という仮説へ至る。受肉に必要なのは器だけでなく、その土地の情報であるという読みで、これは後のU-オルガマリーの姿へ繋がっていく。
- 〔アストライア島三本勝負〕アストライア —「要するにオリュンポス側につけば、 この異聞帯(ロストベルト)における神の一柱として受肉できたでしょう。」 (この場面を読む)
- 〔我、星を裂く雷霆(Ⅰ)〕カドック —「(『異星の神』の地球降臨、地球での受肉―――)」 (この場面を読む)
→ 章別解説: Lostbelt No.5 神代巨神海洋 アトランティス / Lostbelt No.5 星間都市山脈 オリュンポス
幕間の物語
定義と実例がまとまって置かれているのが幕間である。静謐のハサンによる真なる受肉の条件(前掲)に加えて、実際に受肉を果たした英霊として天草四郎が語られる。彼は聖堂教会の概念礼装である黒鍵を扱える理由を、ある聖杯戦争で受肉して聖堂教会に所属した経験があるからだと説明する。その聖杯戦争では勝利できなかったが、偶然の積み重ねで受肉だけは果たした、と。マシュは、一部のサーヴァントが聖杯によって肉を持った記録がカルデアにも確かにある、と裏づけている。受肉は勝者の褒賞とは限らず、事故のように起こりうる。
もう一例が女王メイヴの宝具再現である。本来の儀式には別の血を使うのだが、サーヴァントには受肉しない限り流せないものだから、と彼女は言い、代わりにマスターの血で代用する。受肉していないサーヴァントにはそもそも流せない体液があるという、身体性についての細かい規定がここで示される。
- 〔世界の救済について話をしよう〕天草四郎 —「この私はある聖杯戦争で受肉し、 聖堂教会に所属した経験がありますから。」「召喚された聖杯戦争では、勝利できませんでしたが 偶然の積み重ねで私は受肉を果たしました。」 / マシュ —「受肉……一部のサーヴァントは、聖杯によって 肉を持った経験があると確かに記録がありましたが……。」 (この場面を読む)
- 〔愛しき私の―――〕メイヴ —「ホントは別の血を使うんだけど――― サーヴァントには受肉しない限り流せないものだから。」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 幕間の物語
強襲牛車監獄 ケルティックプリズン
神の側の受肉が実演される場面である。イシュタルがレース儀式を隠れ蓑に天の牡牛グガランナを組み上げていく過程を見て、ダ・ヴィンチは本当に神獣が受肉しかけている、特異点とはいえ単体でこれを実現するとは、と半ば感心する。イシュタル自身は、受肉した神獣はこの世界の法則そのものであり、天の女主人である自分でなければ御しえないと宣言する。受肉した存在が「法則そのもの」と等号で結ばれるのは、聖杯が領域の法を書き換えるという規定と対をなす表現である。
- 〔クロージング・セレモニー〕ダ・ヴィンチ —「凄いな、本当に神獣が受肉しかけている! 特異点とは言え、単体でこんな事を実現するとはね!」 / イシュタル —「受肉した神獣はこの世界の法則そのもの! 天の女主人である私じゃないと御しえない!」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 強襲牛車監獄 ケルティックプリズン
非霊長生存圏 ツングースカ・サンクチュアリ
受肉が「退去しない資格」として機能することが確認される章である。ダ・ヴィンチは、この領域が英霊の現界を阻んでいることを認めたうえで、ブリテン異聞帯と同じく受肉すればその限りではなく、加えて人間でない英霊も退去しない、と整理する。土地が英霊を追い出す仕組みは、肉を持つ者には効かない。
同じ章ではコヤンスカヤ自身の来歴が語られ、その独白は「2017年。四番目の席が空き、 その代わりとして、私は受肉した。」という一文で自らの誕生を告げる。生物としての父も母も持たず、ただ一箇の存在として成った——受肉が出生の言い換えとして使われる唯一の例である。
- 〔第1節 Beyond the walls of the world〕ダ・ヴィンチ —「ブリテンと同じで受肉すればその限りじゃなく、 そこに加えてもうひとつ!」「人間でない英霊も退去しない、だ。 どういう選別をしているんだろうね?」 (この場面を読む)
- (地の文) —「2017年。四番目の席が空き、 その代わりとして、私は受肉した。」 (この場面を読む)
→ 章別解説: 非霊長生存圏 ツングースカ・サンクチュアリ
カルデアゲート
受肉が何をもたらすのかを、最も広い射程で述べているのがエミヤの雑談である。本来、地上の聖杯戦争においてサーヴァントはその場かぎりのもので、彼らに未来は存在しない。だが限定条件——霊子的な電脳生命として再現された場合、聖杯戦争後もマスターと関係を保った場合、あるいは生命として受肉した場合——は別で、それらのサーヴァントは生前のくびきから解き放たれ、「今を生きる」その時代の人間になるだろう、と。
受肉とは、記録にすぎない存在が未来を持つことである——この一文が、本編を通じて受肉に与えられた最も高い評価である。
- 〔episode Ⅳ 宇宙への目覚め〕エミヤ —「聖杯戦争後もマスターと関係を保った場合、 あるいは生命として受肉した場合は別だ。」「それらのサーヴァントは生前のくびきから解き放たれ、 “今を生きる”その時代の人間になるだろう。」 (この場面を読む)
→ 章別解説: カルデアゲート
読み取れる設定
- 定義(確定):完全な生物としての存在を得ること。「真なる受肉……すなわち、完全な生物としての存在を 得るには、聖杯のような願望器が不可欠なのでしょうね。」(静謐のハサン)
- 現界との区別(確定):現界中のサーヴァントの肉体はエーテル製で、「貴方のように、 正しく肉体を持つ生物ではありません。」(静謐のハサン)。→ 現界
- 得るもの(確定):自前で魔力を生成でき、マスターの供給が不要になる。「その後の魔力維持は各々が受け持っております。 人のように食べ、眠り、自ら魔力を生成して、ですな。」(弁慶)
- 失うもの(確定):霊体化ができない。食事が必要になる。死ねば座へ還らず消滅する。「受肉している状態のサンソンは、本当に死ぬわ。」(メディア)
- 時代への影響(確定):受肉した存在は歴史へ影響を与えうる。「受肉した茨木童子は、歴史へ影響を与えうる存在かと。」(風魔小太郎)。魔神の受肉が時代への投錨を可能にする(ソロモン)。
- 退去への耐性(確定):現界を阻む異聞帯・領域でも、受肉していれば退去しない(ダ・ヴィンチ、ツングースカ)。
- 対象の広さ(確定):魔神(ソロモン)、神獣(イシュタル)、精霊=真祖(ダ・ヴィンチ)、悪魔(BB「ムーンセルに『真性悪魔の受肉を阻止せよ』」)、『異星の神』(カドック)、そして召喚式という魔術そのもの(ゲーティア)。
- 【推測】 「一時的な受肉」(Dr.ロマン)「半ば受肉に近い」(清姫)のような緩い用法が併存する。厳密な意味(聖杯級の願望器を要する)と、単に肉体めいた状態を指す俗な意味の二層があると読める。
揺れ・矛盾
- 「一時的な受肉」という語が定義と衝突する。 静謐のハサンは真なる受肉に聖杯級の願望器が不可欠だと述べるが、Dr.ロマンはカルデア常駐状態そのものを「言ってしまえば一時的な受肉だね。」と呼ぶ。同じ語が厳密な規定と俗称の両方で使われており、本文中に両者を接続する説明は無い。
- セイレムの「受肉」は受肉ではない。 マシュは受肉されているのかと問うが、ロビンフッドは「ちげーな。受肉じゃない。」と否定し、以後は「偽りの受肉」「強制的な“受肉”」と呼ばれる。にもかかわらずサンソンやマタ・ハリは単に「受肉」と略して口にしており、同じ章の中で厳密な用法と略記が混在する。
- 受肉の恩恵と代償が章ごとに逆転する。 バビロニアでは自前で魔力を賄えるという利点として語られるが、セイレムでは戦力半減・食料難・死の確定というペナルティとして語られる。前者は聖杯級の願望器による真なる受肉、後者は強いられた偽りの受肉と解せるが、両者を並べて比較する記述は本編に無い。
- 真祖の位置づけ。 ダ・ヴィンチは真祖を「受肉した精霊」と定義するが、奏章Ⅲでシエルは真祖を神霊・精霊の一種族としつつ「純粋な『地球の精霊』」と説明し、受肉の語を使わない。→ 死徒
関連
- 現界 — この世に在ること。受肉はその上位状態
- 霊体化 — 受肉すると失われる機能
- 魔力供給 / マスター — 受肉が不要にする経路
- 単独顕現 — マスター無しで留まるもう一つの道(スキルの側)
- 聖杯 / 願望機 — 真なる受肉の必要条件
- 英霊の座 — 受肉した者が死んでも還れない場所
- 分霊 — 本体の一部として在ること。神霊が地上に立つもう一つの形式
- 魔神柱 / ゲーティア / 死徒(真祖=受肉した精霊)
- 章別解説: 亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム / 終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン / 幕間の物語
FGO全シナリオ(メインストーリー・イベント・幕間・バレンタイン、全151章 1,104,754行)を機械走査し、『受肉』および別名表記を含む発話を全件収集したうえで構成している。引用はすべてゲーム内テキストの原文(演出タグを除去した表示テキスト)であり、要約・改変を行っていない。原文中の改行は半角スペースに置き換えて一行で示した。話者名の無い地の文・システム表示は「(地の文)」と表記する。編者の解釈のうち原文から確実に読み取れないものには 【推測】 を付す。
付録: 原文引用アーカイブ
原文引用アーカイブ(機械収集・51 本)— 本文で扱わなかった言及もここに残してある
全文コンコーダンス上のヒットは 57 行(同一台詞の分岐重複を統合すると 51 行/25 章)。本節にその 全 51 件 を掲載する。
第四特異点 死界魔霧都市 ロンドン
- ソロモン —「七十二柱の魔神は受肉し、新生した。 だからこそあらゆる時代に投錨(とうびょう)する。」
第五特異点 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム
- ダ・ヴィンチ —「受肉した魔神を錨として時代に打ち込むとか、 ちょっと常人の発想じゃないからね。」
第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット
- 呪腕のハサン —「魔神は受肉し、盗人である私と、 贄である貴様を食らうだろう。」
- 呪腕のハサン —「あれは……受肉した魔神(シャイタン)、であろう…… ただ食べるだけの、取るに足りぬ獣のようだが……」
第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア
- Dr.ロマン —「……受肉している、という事だね? ふむ、それなら納得できる。」
- 風魔小太郎 —「金時殿もマスターも正しい決断をされました。 受肉した茨木童子は、歴史へ影響を与えうる存在かと。」
終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン
- マリスビリー —「過去の改ざんは不可能だが、解釈替えぐらいはできる。 それとも受肉して第二の生を望むのか?」
- ソロモン —「ソロモンの遺体を巣とし、 その内部で受肉を果たした“召喚式”。」
- (地の文) —「意思を持って、受肉したもの……!」
亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム
- マシュ —「まさか…… “受肉”されているんですか!?」
- ロビンフッド —「ちげーな。受肉じゃない。こいつは…… 仮初めの肉の器に押し込められているような感覚だ。」
- サンソン —「ええ。この、偽りの受肉の影響はかなり大きい。 脆弱な……これではまるで人間の肉体だ。」
- サンソン —「偽りの受肉の影響だろう。 確かに空腹を感じる。」
- ロビンフッド —「すでに“偽りの受肉”という 大きなペナルティも負わされている。」
- サンソン —「……それとメディア、あなただけが 受肉の影響を逃れた理由もぜひ。」
- マタ・ハリ —「まさかあなたまで、 受肉(なまみ)の感覚に引きずられているの!?」
- サンソン —「受肉のせいですね。 我々も食事をしなければ戦えない。」
- ダ・ヴィンチ —「『―――さきほど報告を受けた件、 強制的な“受肉”と関連する分析結果だ』」
- (地の文) —「受肉後にサーヴァントが……命を落としたら?」
- ロビンフッド —「これも受肉させられた影響だってんなら……」
- メディア《マタ・ハリ》 —「受肉している状態のサンソンは、本当に死ぬわ。 あなたから契約解除されるのよ。」
- 魔神ラウム —「この惑星には、神性でも神秘でもない、さりとて 受肉した悪魔でもない、『伝承』が残されている。」
Lostbelt No.3 人智統合真国 シン
- ダ・ヴィンチ —「それが真祖(しんそ)、受肉した精霊だ。 いや、中国産の真祖がいるとは!」
- ホームズ —「確かに真祖とは本質において精霊に類する存在ではあるが ……受肉した個体としての自我を捨てるだと?」
Lostbelt No.5 神代巨神海洋 アトランティス
- アストライア —「要するにオリュンポス側につけば、 この異聞帯(ロストベルト)における神の一柱として受肉できたでしょう。」
Lostbelt No.5 星間都市山脈 オリュンポス
- カドック —「(『異星の神』の地球降臨、地球での受肉―――)」
Lostbelt No.7 黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン
- コヤンスカヤ —「なぜカルデア前所長そのものだったのか、 どうやってビースト霊基で受肉したのか、」
幕間の物語
- ロムルス・クィリヌス —「人体に害あるものでないだけではなく、 既に受肉したる鶏であるからには滋養もあろう。」
- メイヴ —「ホントは別の血を使うんだけど――― サーヴァントには受肉しない限り流せないものだから。」
- (地の文) —「一時的な受肉をしてるんじゃなかったっけ?」
- 静謐のハサン —「真なる受肉……すなわち、完全な生物としての存在を 得るには、聖杯のような願望器が不可欠なのでしょうね。」
- 天草四郎 —「この私はある聖杯戦争で受肉し、 聖堂教会に所属した経験がありますから。」
- マシュ —「受肉……一部のサーヴァントは、聖杯によって 肉を持った経験があると確かに記録がありましたが……。」
- 天草四郎 —「受肉した例の聖杯戦争において、 私のマスターがルールを逸脱したのですよ。」
- 天草四郎 —「召喚された聖杯戦争では、勝利できませんでしたが 偶然の積み重ねで私は受肉を果たしました。」
復刻:セイバーウォーズ
- エミヤ —「聖杯戦争後もマスターと関係を保った場合、 あるいは生命として受肉した場合は別だ。」
南溟弓張八犬伝
- 岡田以蔵 —「受肉とか言うんじゃったか?」
カルデアン・フロラリア あなたの花が咲く頃に
- エレシュキガル・オルタ —「きっと、その母神を受肉させる、に 限りなく近いことなのだわ……!」
克螺旋境界式 オガワハイム
- Dr.ロマン —「言ってしまえば一時的な受肉だね。」
廃棄少女幻想 エンド・サクリファイス
- レディ —「美遊がいれば、出来るわ。 すべての亡霊(エコー)をもう一度、受肉させられる。」
深海電脳楽土 SE.RA.PH
- BB —「ムーンセルに『真性悪魔の受肉を阻止せよ』 なんて送り出されたんですけど、片道切符なんです。」
強襲牛車監獄 ケルティックプリズン
- ダ・ヴィンチ —「凄いな、本当に神獣が受肉しかけている! 特異点とは言え、単体でこんな事を実現するとはね!」
- イシュタル —「受肉した神獣はこの世界の法則そのもの! 天の女主人である私じゃないと御しえない!」
Apocrypha/Inheritance of Glory
- ダーニック —「必ずこの大聖杯から抜け出し、 貴様たちを受肉させると!」
週末北方遊園 ONI♡LAND
- ジキル —「そう、人間に擬態しているような状態なんだ。 もちろん正確には人間ではないし、受肉もしていない。」
深山温泉大社・大割烹閻魔亭
- 清姫 —「閻魔亭(えんまてい)だとサーヴァントも日常生活を余儀なく されるというか……半ば受肉に近いというか……」
西部絢爛賭場ラスベガス
- スカサハ —「ほう。長き時を生きた仙女? 受肉精霊? ほう……ほほう……。」
非霊長生存圏 ツングースカ・サンクチュアリ
- ダ・ヴィンチ —「ブリテンと同じで受肉すればその限りじゃなく、 そこに加えてもうひとつ!」
- (地の文) —「2017年。四番目の席が空き、 その代わりとして、私は受肉した。」
カルデアゲート
- エミヤ —「聖杯戦争後もマスターと関係を保った場合、 あるいは生命として受肉した場合は別だ。」
当世風贈答菓子
- 虞美人 —「生物という容(うつわ)に受肉させられてしまった以上、 生命力の補充は必要ではあるけれど。」